ビニール傘を読んだ

社会学者岸政彦の初短編小説。
大阪の街を舞台に社会の片隅で心を密やかに擦り減らして生きる人々の心象を描いた群像劇。

ビニール傘

ビニール傘

登場人物達の生活の断片がパッチワークのように交差する。
読み進めるとその模様に軽く目眩を覚えてしまうだろう。

脈絡なく、行レベルで移り変わっていく登場人物達の独白。
次の行では唐突に場面も人も変わるが、しかし微妙に関係性の糸は切れないように思えて気が抜けない。
彼ら/彼女らの視点を網目のように掛け合わして場面転換のフェイドインとフェイドアウトを繰り返すという荒技と、作品の根底に漂う諦観とが相まって、読み手は奇妙な既視感を覚える。

作中で描かれる難波や梅田の街のことは全然知らないけれど、そこに浸透している寂しさや侘しさには何となく見覚えがあるような気持ちになってしまった。