未処分利益

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老後の資金がありません 感想

コツコツと貯めた老後資金1200万を元に、安泰な老後生活を計画していた後藤篤子。

だが、事態は唐突に急変する。

娘夫婦の派手婚援助で500万、義父の葬式代負担で400万と大きく貯蓄を取り崩してしまったのだ。おまけに折からの不景気のあおりを受けて夫婦共々失職。 貯蓄も大きく目減りし、経済的に先行きの見えない不安の中、さらに追い打ちをかけるように娘夫婦のDV疑惑が浮上する。

泣きっ面に蜂な不運スパイラル状態の篤子は、それでも幸せな老後生活のためなりふりかまわず奮闘する。

老後の資金がありません (中公文庫)

老後の資金がありません (中公文庫)

「慶弔系イベントにかかる費用は高額になるのが当たり前」という感覚って、常々、ある種の社会的な「洗脳」によるものだと僕は思っているんだけど、本作ではその「洗脳」の根底にあるものの正体と、その洗脳からの解脱プロセスがとてもわかり易く描かれ、読了後は「著者よ!よくぞ、書いてくれた」と胸がすかっとした。

折しも今年の2月に父が他界し、亡くなった翌日に葬儀社とのやり取りの中で同様の洗脳的空気感を感じていたので、本作での僕の篤子に対する感情移入は尋常ではなかった。

その際は、父が生前から「葬式にはお金をかけないで、家族葬でサッと終わらせてくれ」と口を酸っぱくして言っていたことを母と守り通したので、当初、葬儀社が提示した規模感の費用はかからなかったが、やはり遠縁の親族からは「本当にお葬式はこれで良かったの?もっと多くの人を呼んで盛大にやった方が良かったんじゃないの」というような悪感情を向けられたことを覚えている。

何のために、そして誰のために行う慶弔イベントなのかそれを今一度認識して各々の決断をしたいものだ。

本作のあとがきで室井佑月氏が言及している、豊かな老後には「くだらない見栄」は不要で、必要なのは同じ視座を持つ友達という件が素晴らしかった。

追記

本作の著者である垣谷美雨さんの作品で「ニュータウンは黄昏れて」も実に面白かったのでおすすめしたい。 感想は下記に記載。 www.vagrantup.jp